お坊さんのトリセツ Vol.1
鎌倉顕証寺 横須賀信常寺 信清御住職
Q お坊さんになった理由をお聞かせください?
A わたくしの場合は、僧侶の子供として生まれました。一般的には僧侶に違いないのですが、佛立宗のお坊さんと世間のお坊さんではちがうという認識で育ちました。どこが違うのか。一般的にお坊さんのイメージとしては、亡くなった人の葬儀、年回忌などの回向供養を専らとする人たちのことをイメージするのではないかと思います。ただ、私のイメージは全く違いました。佛立宗のお坊さんは「人のために」ということを大前提として活動されています。「亡くなった人のために」も人のためにではございますが、むしろ生きている人に特化して活動されているのが佛立宗のお坊さんです。私は物心つくときからそういう認識でおりました。
御信者さんの中で具合が悪い御信者さんが入院をしますと、父は外出中「ちょっと寄るところがあるからね」とお見舞いに行くのですが、私もよく同行させていただきました。
また、死の床につかれた方には、父が耳元で南無妙法蓮華経のお題目をお唱えして息を引き取るまで寄り添う、そんな姿を子供のころから見ておりました。
ですから、父はただのお坊さんではないという認識で育ちました。父が1番隊長で、私は2番隊長であると、住職になった今でも思いは変わりません。
Q ご住職になったときに「うれしい」と感じるときはどんな時ですか?
A 信者さんがご利益いただいて、お寺にお参りに来られた時に「先日はありがとうございました」という言葉をいただいた時ですね。
また、最近は核家族化が進んでおりますが、家族3世代でお寺にお参りに来ていただく光景を見ると「信じる心」を伝えられているなと嬉しく感じますね。
Q ご住職っておやすみあるんですか?
A 学生の間は土日があったのですが、お坊さんになると365日毎日朝夕のお参りがあるんです。ですので、基本的には休みはないのですが、唯一元旦だけは朝のお参りがないんですね(笑)。ただ、人間ですから休みが全くないと大変ですから、なんにもない日はある程度自由に過ごさせていただいていますが、1月に1回あるかないかというところです。
Q ご住職って普段何されているんですか?
A 365日の朝夕のお参りに加えて、特に予定がない時には普段疎遠になっている信徒の方を訪問させていただいたり、他のお寺へのご挨拶をさせて頂いたり、普段できないことをしようとしますのでスケジュールが真っ白な時ほど忙しいですね。自分でもよく用事を見つけてくるなと感心します。
Q 鎌倉顕証寺/横須賀信常寺の歴史を教えてください。
A 本門佛立宗は、開導聖人がお寺を出られて御信者さんのお宅で行われる「御講(御信者さんの家で行われるお参り)」を起点にした宗派ですから、神奈川県内のお寺の発祥もそういった経緯で開かれているお寺がいくつかあります。鎌倉のお寺も、東京にある乗泉寺の御信者さんを起点として鎌倉に広まり、明治末期に開かれたのが顕証寺です。信常寺についても鎌倉の顕証寺とルーツが同じです。
Q 顕証寺/信常寺さんの自慢は?
A まずこのロケーションでしょうか。相模灘を目の前にして、富士山、江の島を眺望できる。海に面したお寺は日本全国を見てもそう多くないように思います。また、顕証寺では樹木葬というものを実施しています。開いて3年くらいになりますが、大変に好評で多くの方に求めていただいています。
信常寺についてですが、信常寺は横須賀にあるお寺です。実は日蓮上人が最初に上陸したと伝えられているのが、この横須賀の米ヶ浜なんですね。西暦1253年(建長5年)位のお話ですが、そういった日蓮聖人とも所縁が深い場所にあるお寺というのが横須賀信常寺になります。
Q 樹木葬ってどういうものでしょうか
A いわゆるガーデニング霊園ですね。「お花とともに眠る」というのがコンセプトでして、樹木葬域には「樹木葬式タイプ」と「集合墓式タイプ」の2種類がございます。墓標を立てずにプレートを設置する形になります。
Q ご住職の大好きな食べ物って何でしょうか?
A そうですねー。他人からはグルメに見られているのですが、案外素朴なものが好きですね。今の時期で言うと、ソラマメですかね。お酒のおつまみとしてもそうですが、お酒がなくてもよく食べますね。他にもケーキが好きです。チョコレートケーキが好きで、御信者さんのお宅にお参りに行くと、たまに出していただくのですがそういう時は少しうれしくなりますね(笑)
Q ご住職の座右の銘ってなんですか?
A 「温故知新」ですね。故きを温ねて新しきを知る、私が物事に取り組むときにはこの言葉が起点になります。知らないことでも初めてのように思うのですが、私は自分が最初だということは言いたくないんですね。既にそんなことは誰かやっているよと。自分が知らないだけで、それを知るということが大事であって、日々温故知新だと思います。
もう一つは、ドイツの宰相の言葉ですが、「おろかものは自己の経験に学び、賢者は他人の歴史から学ぶ」という言葉ですね。愚かな人は自分が経験しなければわからないが、賢い人は他人の経験を自分のものとして学ぶという言葉です。この言葉も普段から心がけていることですね。