お坊さんのトリセツ Vol.4
横浜南区 照隆寺 前島御住職
Q なぜお坊さんになったのでしょうか。
父もお坊さんで、小さい頃は渋谷の乗泉寺という大きなお寺のお坊さんたちの宿舎で暮らしていました。中学、高校は反抗期で親の言うことを素直に聞けない時期もありました。その後、進路について考える際、大学の同級生で先にお坊さんになっている仲のいい友人が “毎日” 部屋に来て、「一緒にお坊さんをさせていただこう」と誘いに来るわけです。私自身はお坊さんになるか就職するかで揺らいでいた時期ではありましたが、ふとしたきっかけで埼玉県の新座にあるお寺で1週間その友達と一緒に生活をすることになったんですね。その新座のお寺で、先輩のお坊さんに「私たちお坊さんは、悩み苦しむ人のお役に立たせていただこうと励むという大切な使命がある。一緒にやってみないか」ということを言われまして、その時にふと反抗期に父や母に言われていたことや、他人のために祈る人たちの姿などいろいろな事が蘇ってきて、先輩の言葉と結びついたんですね。それがきっかけとなり決心いたしました。
Q ご住職になって一番大変な事って何でしょうか。
大変なことはきっとあると思うのですが、あまり大変とは思わないですね。自分が鈍感なのかもしれませんが、本当に大変な時は「大変と思う暇もない」というのが正しいのかもしれません。あとあと考えてみると、大変な時ほど「させていただいた」という喜びに変わっていくもので、より充実した時間を過ごすことができているように思います。
Q ご住職になってうれしかった事って何でしょうか。
やっぱり御信者さんの笑顔ですね。うまくいかないとき、悩みを抱えているときに一生懸命に祈る姿も見ているものですから、その物事がいいほうに転び、喜んでお参りに来ていただいた時の笑顔は自分事のようにうれしいものです。
Q 休日は何をなさっていますか?
朝のお参りは365日ありますので、基本的には休日はないですね。最近はなかなか時間が取れませんが、時間が作れた時に以前はサイクリングしたり、カメラでお花や風景の写真を撮ったりして楽しんでました。
Q 境内地のお花もとてもきれいでした。
家内がコロナのこの状況だけれども、お寺に皆さんが来た時に「きれいだなぁ」と感じて心弾むようになってほしいと、夕方のお参りの前には欠かさず手入れをしてくれています。道行く人にも「きれいですね」と仰っていただき、中には境内地にまで入ってきてくれて見ていかれる方もいらっしゃいます。
Q ご住職がここ一番という時に食べる食べ物って何でしょうか。
「トンカツ」が好きで、いろいろなところに行って食べています。京都の本山近くにある大江戸というトンカツがおいしくて、学生時代はそんなに沢山はいけませんでしたが、ごくたまに行っていましたね。大体ロースカツを頼むのですが、一番おいしいのはお皿に盛られたカツの内、左から2番目が肉と脂身の加減が絶妙でおいしいんですよ(笑)。
Q ご住職の趣味を教えてください。
趣味というわけではありませんが、最近は料理もしています。料理って準備や段取りなどをしなければいけなくて、集中する事ができるんですね。そういった集中が自分の考えを切り替える一つの手段になっています。難しいものはできませんが、カレーや生姜焼き、豚汁などを作っています。
他にも、中学生くらいからサザンオールスターズが好きで、学生時代はLPが出るとカセットに焼き込んでそれを聞きながら海に行くという青春時代を過ごしていました。最近の歌ではオリンピックの企画で作られた「SMILE 〜晴れ渡る空のように〜 」という歌があるのですが、とても好きな曲でいつも励まされています。素晴らしい歌詞で、
「情熱を消さないで、歩みを止めないで、この世に生まれた以上」とか
「世の中は 今日この時も悲しみの声がする 次の世代に何を渡そうか」とか
「素晴らしき哉 Your Smile あなたがいて I’m So Proud 愛しい友への歌」
等という歌詞は仏教にも通じるものがあると思うのですよね。私があまりにもよく聞くので、次男は私よりサザンオールスターズのファンになっています(笑)。
Q 照隆寺の歴史を教えてください
大正10年位から、東京渋谷にある乗泉寺の御信者さん達が横浜に住まわれるようになったんですね。そのときに乗泉寺のお坊さんたちも横浜に交代で通われて、御信者さんのケアをしていたようです。その後、昭和18年位にお寺の基となる「親会場」が設立されました。この地に移ったのは、昭和30年くらいでしょうか。その後昭和52年に本堂が建立されて今に至っております。
Q 先の大戦も経験されたお寺なんですね。
そうですね、昭和20年5月29日に横浜大空襲があったんですが、その前日にお寺の御信者さんが防空壕を掘られて、その防空壕にご本尊とご尊像を安置したんですね。おかげてご本尊とご尊像は戦禍を免れることができました。御信者さんたちのお寺を思う気持ちが今の照隆寺につながっています。
Q 座右の銘を教えていただけますか?
「全ての命はつながっている」という言葉ですね。今、社会ではいろいろな差別が問題となっていますが、仏教の教えは「みんな」がご利益を頂くことができ、笑顔になれることができ、幸せになれるという事を教えていただくんですね。根底ではいつもその言葉を思っています。
Q 最後に一般の方にメッセージをお願いできますか。
お寺というと特別な時に行くところという思いがあるかもしれませんが、実は仏教は皆さんの毎日の生活の中にあるべきもので、生きていく上でとても大切な事を教えていただいています。是非お寺に来て、仏教に触れていただきたいと思っています。いつでもウェルカムですので、是非お参りください。